SaaSの死は本当か?会計ソフトをやめClaudeで経費を回した実録

「SaaSの死」という言葉を最近よく見かけるようになりました。2026年に入ってSaaS銘柄が急落し、その引き金のひとつがAIエージェントだったと聞けば、投資をしている人なら気になるはずです。私は副業の確定申告に向けて、会計SaaSを契約せずにClaudeだけで経費処理を回してみました。その一次体験から見えた「消えるSaaS・生き残るSaaS」を、投資とAI活用の両面から整理します。

結論から言うと、「SaaSの死」は誇張ではあるものの、的外れでもありません。少なくとも私の経費まわりでは、月額のソフトがClaude上のワークフローに置き換わってしまいました。

SaaSの死(SaaSpocalypse)とは何か

「SaaSの死」、英語では SaaSpocalypse と呼ばれる現象は、2026年に実際に株式市場で起きた出来事です。情報の時点は2026年6月時点のものとして読んでください。

報道ベースで整理すると、こうなります。

  • 2026年2月、わずか48時間で約2,850億ドルがSaaS関連企業の時価総額から消失した
  • 同年1月中旬から2月中旬にかけて、ソフトウェアセクター全体で約2兆ドルの時価総額が蒸発した
  • きっかけのひとつが、Anthropicが投入したAIエージェント「Claude Cowork」のローンチだった

なぜ一製品の登場でここまで売られたのか。市場が「AIエージェントは、SaaSが“1席いくら”で課金してきた知的労働のカテゴリを、まるごと置き換えられる」と判断したからです。

つまり下落の本質は、業績そのものよりビジネスモデルへの疑問でした。「人数 × 月額」で伸びてきたSaaSの前提が、揺らいだのです。

なぜAIエージェントがSaaSを脅かすのか

ここが投資判断にもAI活用にも効く核心なので、噛み砕いておきます。

席課金(per-seat)モデルが崩れる

従来のSaaSは「従業員が増えるほど課金が増える」構造でした。これは「使う人数 ≒ 得られる価値」という前提に支えられています。

ところがAIエージェントは、1つのエージェントが複数人ぶんの作業を横断して片付けてしまう。すると「人数」と「価値」の比例関係が切れます。10席ぶん契約していたツールが、エージェント1つで足りるかもしれない——この発想が席課金の土台を崩しました。

「ツール」から「成果」へ

もうひとつのキーワードが、SaaS(Software-as-a-Service)から Service-as-a-Software への転換です。

  • これまで:作業を助ける「道具」を月額で買う
  • これから:作業の「成果」そのものを買う

調査会社の予測でも、2028年までに純粋な席課金は陳腐化し、多くのベンダーが従量・成果ベースの課金へ移ると見られています。別の予測では、2030年までにポイント製品型(単機能寄り)のSaaSの一定割合がエージェントに置き換わる、あるいは吸収されるとされています。

操作する層が変わる

象徴的なのがClaude Coworkです。これはデスクトップ上でファイルを読み・整理し・作り、ウェブを操作し、複数ステップの作業を自走するエージェントです。請求書をビジョンで読み取り、金額・日付・取引先を抽出してExcelに整理する、といった作業を一気にやり切ります。

これまで「会計ソフトを開いて、OCRツールにかけて、表計算に転記して……」と複数のSaaSを渡り歩いていた作業が、エージェントという新しい操作層に集約される。これが「SaaSの死」と呼ばれる現象の中身です。

【実録】会計SaaSを使わず、Claudeで経費を回してみた

ここからが本題の一次体験です。私は副業(個人事業主・青色申告)の経費処理を、会計SaaSを契約せずにClaudeだけで回してみました。

やったのは、こんな流れです。

  1. スマホで撮った領収書のスクショ(Claude Pro、家賃、レンタルサーバー、電気、携帯)をClaudeに渡す
  2. Claudeが内容を読み取り、勘定科目を判定する(AIツール代→消耗品費、家賃→地代家賃、など)
  3. 自宅兼用の費用は家事按分(家賃10%・通信費50%・電気15%など)を適用する
  4. 複式簿記の仕訳に変換し、Excelの仕訳帳に1行ずつ追記する

これを、自分用に作った「経費記帳スキル」と「登録漏れチェックのスキル」で半自動化しました。前者は自然言語の入力を仕訳に変換してExcelに書き込み、後者は毎月の固定費(サブスクや家賃など)が登録漏れしていないかを突き合わせて教えてくれます。

特に効いたのは、税務の論点まで壁打ちできたことです。たとえば——

  • レンタルサーバーの年払いを、開業前に支払っていたので「開業費(繰延資産)」として計上し、任意償却で当年に全額費用化する
  • 携帯料金のポイント相殺ぶんは「実際に支払った額」しか経費にできないので、ポイント充当後の請求額をベースにする

こうした判断は、会計SaaSの入力フォームを埋めるだけでは出てきません。「これはどう処理すべき?」と聞けば根拠ごと返ってくるので、調べながら手を動かす時間が大きく減りました。

念のため補足すると、税務処理の最終的な妥当性は、確定申告の際に税務署の無料相談や青色申告会で確認するのが安全です。AIの回答は下調べと段取りの役割と割り切っています。開業準備そのものをAIで段取りした記録は、個人事業主の開業届と青色申告をAIで段取りした実録にまとめています。

ここで言いたいのは「会計SaaSが不要」という単純な話ではありません。私のように取引がシンプルな個人事業の経費処理という特定の作業は、月額のソフトを使わなくても、AIエージェントの上で完結できてしまった——という事実です。これはまさに、SaaSpocalypseで市場が織り込もうとしている変化の、小さな実例だと感じました。

投資家として見た「生き残るSaaS・消えるSaaS」

では、SaaS銘柄はすべて沈むのか。ここは投資視点で冷静に分けて考えたいところです。なお以下は私見であり、特定銘柄の売買を勧めるものではありません。

予測の多くが指摘するのは「全滅」ではなく「選択的なアンバンドリング」です。つまり、コモディティ化した部分が剥がれ落ち、堀を持つプラットフォームはむしろ強くなる、という二極化です。

判断軸を整理すると、こうなります。

  • 消えやすい:単機能寄りで、作業を肩代わりするだけのツール。エージェントに代替されやすく、席課金の前提も崩れやすい
  • 生き残りやすい:独自データの蓄積(データの堀)やネットワーク効果を持つもの。エージェントから呼ばれる「土台」になれるプラットフォーム
  • 課金の行方:席課金から、従量・成果ベースへ移行できるかが分かれ目

投資の文脈で言えば、「AI=SaaSの敵」と短絡するより、「どのSaaSがエージェント時代の土台side(インフラ側)に回れるか」を見るほうが建設的だと考えています。私自身は、こうしたテーマを自分の数字で検証しながら、つみたて投資の方針に落とし込むようにしています。

投資テーマとしてのAIやSaaSに関心があるなら、まずは少額からでも実際に触れてみるのが理解の近道です。AIを使って資産形成の方針を組み立てる進め方は、FIRE向け証券口座おすすめ比較で証券口座の選び方とあわせて解説しています。

まとめ:SaaSの死は「全滅」ではなく「再定義」

今回の一次体験から得た結論はシンプルです。

  • 「SaaSの死」は、ビジネスモデル(席課金)への疑問が株価に表れた現象で、誇張だが的外れではない
  • 単機能の作業は、AIエージェントの上で月額ソフトなしに完結し得る(経費処理で実感した)
  • ただし全滅ではなく、データの堀を持つプラットフォームは生き残る「再定義」の局面
  • 投資もAI活用も、「ツールを買う」から「成果を出す」へ発想を移すと景色が変わる

AIを道具ではなく“同僚”として使い始めると、毎月の固定費の意味が変わってきます。あなたが今払っているそのサブスク、来年も必要でしょうか。一度、棚卸ししてみる価値はあると思います。

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※本記事は2026年6月時点の情報・個人の体験に基づくものであり、投資を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。また、税務処理の最終的な可否は税務署・青色申告会等の専門窓口でご確認ください。