金利が上がりきる前に家を買っておくべきか——そう考えて焦っている方は少なくないと思います。住宅ローンの金利は上昇局面に入り、人気エリアの地価も下がる気配がない、と感じている方も多いのではないでしょうか。「待つほど不利になるのでは」という不安は、決して的外れではありません。

ただ、この焦りには落とし穴がありました。FIRE計画の中で「購入時期を7年早めたらどうなるか」を自分の数字で試算してみたところ、会社を辞められる時期が7年遅れるという結果が出たのです。そして最終的に分かったのは、悩むべきポイントが購入時期ではなかった、ということでした。

前提:計画では「42歳で購入」だった

もともとのFIRE計画では、住宅購入を42歳に設定していました。理由は明確で、Coast FIRE(資産が自動的に育つ水準に到達した状態)を達成し、経済的な安全圏に入ってから買う、という設計だったからです。会社員のうちにローン審査を通し、購入・引き渡しを終えてから独立する——この順序を1つのイベントとして固定していました。

ここに、金利上昇という外部環境の変化が加わります。12年も待っていて大丈夫なのか。実際、住宅金融支援機構のフラット35(21〜35年)の金利は、2026年7月時点で年3.140%〜5.400%。かつての超低金利期と比べると、すでに1%以上切り上がっています。これは固定金利の数字なので、今回検討している変動金利そのものではありませんが、金利環境がどちらを向いているかの傍証にはなります。「これから上がるかも」ではなく「もう上がっている」というのが現状でした。

購入を7年早めると何が起きるか

そこで「35歳で購入する案」を試算しました。すると、想像していなかった副作用が出てきます。

住宅ローンの返済が始まると、それまで貯蓄に回していた分が圧迫されます。8,500万円の物件を変動金利・23年ローンで購入した場合、固定資産税や修繕積立まで含めた実質的な住居コストは年間445万円程度。賃貸を続けた場合の年120万円と比べると、年間325万円の新たな支出が生まれます。

その結果、年間の貯蓄額は当初計画の約4分の1にまで落ち込む計算になりました。35歳から41歳までの7年間、この状態が続くわけです。42歳を迎えた時点での資産は、Coast FIREの到達水準に数千万円届かない見込みでした。

つまり、42歳で辞めるという選択肢そのものが消えてしまう。しかもその時点でローン残高は多く残っており、独立して収入が下がった状態で返済を続けることになります。試算では手取りの7割近くが返済に消える計算でした。ローンが重い時期と、収入が落ちる時期が重なってしまうわけです。

金利上昇のリスクを避けるために早く買ったつもりが、資産形成の遅れという別の代償を払う。しかも規模は同じくらい。これが1つ目の発見でした。

本当に効いていたのは「いつ」ではなく「いくら」

ここで計画を見直していて、もう1つのことに気づきます。計画書に書いてあった8,500万円という金額は、注文住宅を想定した上限側の見積もりでした。実際に検討していたエリアの建売なら、6,000〜6,500万円が相場です。

この前提で計算し直すと、景色が一変しました。

6,500万円の物件なら、実質的な住居コストは年間353万円程度。賃貸との差額は233万円まで縮みます。年間貯蓄は8,500万円ケースの約1.7〜2倍を確保でき、42歳時点の資産も大きく変わってきます。42歳での完全な独立はまだ厳しいものの、1〜3年程度の後ろ倒しで射程に入る水準でした。8,500万円ケースの「7年以上の遅れ」とは、意思決定として全く別の話になります。

購入時期を7年動かすことより、物件予算を2,000万円下げることの方が、ゴールへの影響が大きかった。 悩んでいた場所が間違っていた、というのが今回いちばんの発見です。

なお、この結論は「繰り上げ返済をするかどうか」とはまた別の論点です。返済方法については住宅ローンの繰り上げ返済とFIREの関係で別途検証しています。

また、そもそも賃貸を続けるか持ち家を買うかについては以前に検証し、当時は「42歳での購入」という設計を妥当と判断していました。今回はその同じ前提を、金利環境の変化と実勢価格の観点から見直した形になります。計画は一度作って終わりではなく、前提が変われば結論も変わる、ということでもあります。

副産物:自分の計画書を読み違えていた

もう1つ、地味ですが効いた気づきがあります。計画書には「戸建て建売新築」と書いてあるのに、金額は注文住宅相当の8,500万円が入っていました。安全側に多めに見積もったつもりだったのですが、その意図をどこにも書き残していなかったのです。

数年後に読み返した自分は、その数字を「建売の想定価格」として受け取ってしまう。前提の数字だけでなく「なぜその数字にしたか」を残しておかないと、後の自分が読み違えるということでした。

平均値ではなく、自分の数字で確かめる

「金利が上がる前に買うべきか」という問いに、世の中の平均的な答えはありません。答えを決めるのは、自分の資産形成のペース、目指すゴールの時期、そして買おうとしている物件の価格です。

今回の検証で分かったのは、①購入時期と退職時期は分離して考えられる ②ただし分離するとローンの重さと収入減が重なるリスクがある ③そして最も効くのは予算である、という3点でした。

なお、購入時期を早める場合には、そもそも希望額を借りられるかという別の壁もあります。銀行の審査は実際の契約金利ではなく、保守的な審査金利で返済負担率を見るのが一般的です。この点は机上の試算では確定できないため、実際に事前審査を受けて確かめる必要があると考えています。


※本記事は情報提供を目的としており、特定の住宅購入・借入の判断を推奨するものではありません。記載の金額・比率はすべて2026年7月時点の個人の試算・概算であり、実際の金利・税制・物件価格により結果は変わります。住宅の購入や借入の判断はご自身の状況に応じて行ってください。専門資格に基づく助言ではなく、一個人の検証記録です。

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