AIに作らせた資産計画は、きちんと筋が通っている——そう思っていませんか。私は自分のFIRE計画で、真逆を思い知りました。

私のFIRE計画は、Claude(Opus)と何度も議論と修正を重ねて育てた、それなりに自信のある文書でした。先日ためしに、別のより新しいAIに”たった一つ”だけ頼んでみたんです。「この計画、どこか矛盾してない? 前提が甘いところを突いて」と。

返ってきたのは、3か所の穴でした。しかも一番”はっと”したのは、穴の中身そのものより、なぜ穴が空いていたのかの理由の方でした。順に共有します。

穴①:「手取りで足りる」と「売上で足りる」は別物だった

一番ヒヤッとしたのはここです。私は将来フリーランスで働く前提を「これくらいの手取りがあれば回る」と置いていました。ところが、それをフリーランスの”売上”ベースで計算し直すと、話が変わります。

売上からは、税金と社会保険料が引かれてはじめて手取りになります。つまり同じ手取りを得るには、その上乗せぶんだけ多くの”売上”が必要。私が置いていた売上想定では、標準的な運用利回りでも老後の途中で流動資産が尽きる計算でした(実際にシミュレーションを回して確認しました)。

「手取り」と「売上」を無意識にすり替えていた——たった一語の混同で、必要な稼ぎを小さく見積もっていたわけです。

穴②:非課税の枠を、多めに見積もっていた(かもしれない)

次は制度の細部。iDeCoを一時金で受け取るときの退職所得控除について、拠出年数を長めに見積もっている可能性を指摘されました。もし指摘のとおりなら、約290万円ぶん非課税枠を過大に見込んでいたことになります。

出口(取り崩し)の設計は、この非課税枠を前提に組み立てます。土台の数字が甘いと、後ろの計算が全部ずれる。ここは自分で確定できる話ではないので、年金事務所や税の情報で裏を取る”宿題”として持ち帰りました(この「AIは指摘できても確定できない」話は、後でもう一度出てきます)。

穴③:更新するたび、前の部分と噛み合わなくなっていた

そして一番”構造的”だったのがこれ。私の計画は途中で「完全リタイアを60歳に前倒し」と決めていたのに、その変更が後半のセクション(資産推移や出口設計)に反映されないまま残っていたんです。前半と後半で、前提が食い違っていた。

一つの文書なのに、内部で分裂していた。読み返すと一貫して”見える”のに、数字を突き合わせると噛み合っていない。これは怖い種類の間違いでした。

(なお、これは”計算・整合性の穴”の話です。Coast FIREという戦略”そのもの”に潜む構造的な落とし穴は別物で、そちらは「Coast FIREの落とし穴(3つの穴)」に分けてまとめています。)

効いたのは”賢いAI”ではなく、”整合性の詰め直し”

ここが今回の本当の学びです。

正直、最初は「新しくて賢いAIだから見つけてくれた」と思いました。でも振り返ると、違います。穴は、自分とAIで何度も議論して修正を重ねるうちに、少しずつ溜まっていたんです。足すたびに、前の部分とのつじつまが少しずつズレていく。長く育てた計画ほど、この”ドリフト”は静かに積もります。

効いたのは、賢いツールに変えたことではなく、「情報を足す」のをやめて「矛盾していないか」だけを通しで詰め直したこと。同じAIに「矛盾を突いて」と頼んでも、人に見せても、たぶん同じ効果があったはずです。

(そもそもの計画の立て方は「ClaudeでFIRE計画を作る完全ガイド」に、AIに”詰めさせる”やり方は「AIにプランを『詰めて』もらう(Grill Me)」に、初めて計画を作ったときの記録は「FIRE計画書をAIに2時間詰められた話」に書いています。)

そして——AIは穴を”見つける”が、”塞げない”

もう一つ正直なこと。詰め直しても、それで計画が完成したわけではありませんでした。

AIが突いた点のうち、年金の受給見込み額・保険料の相場・住宅ローン控除の効き方などは、「ここ怪しいよ」と指摘はできても、正しい数字までは確定できない。結局これらは「要確認」として残り、私は年金事務所や税の情報で自分で裏を取る宿題を持ち帰りました。

AIは、計画を詰める相手としては最高です。でも最後に数字を確定させるのは、やっぱり自分。ここを混同すると、”AIが言ったから正しい”という新しい落とし穴にはまります。

まとめ

  • 「手取り」と「売上」を混同しない(フリーの必要売上は、手取り目標+税社保ぶん上乗せ)
  • 長く育てた計画は、更新のたびに内部矛盾がドリフトする——たまに”矛盾チェックだけ”の回を作る
  • 効くのは賢いツールより、敵対的な整合性レビュー(同じAIに「矛盾を突いて」で十分)
  • AIは穴を見つけるが塞げない——最後の数字は自分で外部確認する

自分の計画が完璧に見えるときほど、一度立ち止まって「矛盾してない?」と誰か(AIでも人でも)に突かせてみる。その一手間が、老後に効いてきます。


お金の計画を”自分の数字”で詰めていく記録

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FIRE計画を自分の数字でゼロから組み立てたい方は、プロンプト全文とテンプレをまとめた「Claude FIRE計画書の作り方 完全ガイド」もどうぞ。

※本記事は一個人の実録・検証であり、専門資格に基づく税務・投資の助言ではありません。制度の扱いや税額・年金額はご自身の状況と最新の規定でご確認ください。